2011年俳句雑詠

雑詠




初旅









ハワイ











待春
風雪に町沈みつつ暮れ行ける
沖遥か船影一つ冬の涛
峠越ゆ白一色の初景色
雪しまき見る間に轍消し行ける
雪蹴立てバスに威力や峠越へ
万物を覆い隠せる雪煙
雪煙何も見えぬも景色かな
窓ガラス越しに寒気の入る車内
譲られて座る電車に著ぶくれて
機上より明け行く空や初景色
ハワイかな雪の日本を離れ来て
豪雪を逃れハワイの空青し
初旅はもう来ることの無きハワイ
ホノルルの町望む丘冬の虹
初富士を拝する機内旅帰り
山陰の光れる雪を機上より
寒さ入む南国よりの旅帰り
初旅を心の襞に仕舞い込む
思い切り四肢伸ばしたし春を待つ

 

ハワイ・カメハメハ大王像

ハワイ・クルージング

ハワイ・パールハーバー
雑詠 森閑と部屋の寒さよ旅帰り
社殿まで行けぬ人ごみ節分会
日溜りに縄跳び遊び春隣
熱き茶を諸手に受けし暖かさ
空き部屋の動かぬ空気冴帰る
人集ひ来れば春寒薄らぎし
春立つや背筋を伸ばす歌稽古
外にも出よ雨が運びし暖かさ
春の雪音なき音を聞き分けし
さざ波の立つ船溜り若布生ふ
梅探る石段古りし岬の宮
春寒や網縫う漁夫の寡黙なる
春の霜煌き放ちつつ消ゆる
探梅や丘の起伏に足慣らし

荒るる日は春待つ心募りける

 

2月3日大社分院

浜田港
雑詠















梅林



保育園


震災
空き部屋の動かぬ空気冴帰る
春の風邪引くまじ演奏会真近
冬すみれ咲かせ校舎の昼下がり
春浅き町を見下ろす風の丘
春立つや背筋を伸ばす歌稽古
立ち話まだ続きをる町四温
日溜りに縄跳び遊び春隣
熱き茶を諸手に受けて暖かし
春一番よりつのり来る旅心
さざ波の立つ船溜り若布生ふ
農小屋の肥料の匂ひ犬ふぐり
梅林を我が物として鳥遊ぶ
探梅や丘の起伏に足慣らし
朝の日に鳥語しきりの梅林
園児等の声張り上げて雛の宴
お遊戯の園児の手振り雛の宴
震災の友案じをり春灯下

 

梅林

響演奏会
桂林・漓江行














熊本・阿蘇行






昭和の日


飛機や今夕日を追ふて日永なる
悠久の漓江下りの遠霞
淡き色見せ桂林の桐の花
対岸は深き若葉の森続く
新緑や魚釣る人の川筏
山水の世界を極め川朧
行き交ひし舟に手を振る春の川
心地よき舟のデッキの春の風
新緑の川風に人洗はるる
かしましく中国娘囀れる
春遠き九重連山幾曲がり
阿蘇谷の広がりに吹く春の風
春の風纏ふ虚子句碑阿蘇五岳
阿蘇五岳霞曳きづり遥かなる
せせらぎを動かしている春日かな
一入に父母思ひ出す昭和の日


 

漓江下り

桂林のパンダ


城山

子供の日


扇原茶園





父の日

こもれび句会

城山を盛り上がらせて椎新樹
公園に泣く子走る子子供の日
一心に子を撮る母や子供の日
茶畑に来て頂きし新茶かな
一番茶袋山積みなる茶園
昼時は一時茶摘みの音も絶へ
絨毯を敷き詰めしごと茶摘みあと
広き背に負われし昔父の日よ
森に入るまづ夏草の香を浴びて
四阿に若葉の香りむせるやう
夏木立空の青さを引き寄せる
万緑を独り占めせる森深し
森出でて急に明るき薄暑かな
時鳥鳴き出せば立て続けなる

 

こもれび公園
山口常栄寺






山口東行庵

博多聖福禅寺
三瓶







雑詠
雪舟の庭取り囲む若葉かな
広縁に老師講話や風薫る
回遊の庭園囲む百千鳥
散る時は続けさまなる竹落葉
住職の尺八も聞き庭若葉
晋作の像を囲みし若葉かな
風光るビルの谷間の一禅寺
松蝉の声の広野をひねもせる
遠くまで人声通る大夏野
本堂に読経す消えて行く薄暑
高原の広さに遠し時鳥
老鶯の声に囲まれ汀子句碑
梅雨霧の町深々と覚め難く

 

三瓶姫逃池の杜若

山口常栄寺(雪舟庭園)
こもれび公園









芸北・八幡高原






雑詠





青蘆の丈の高さの風に会ふ
万緑の中少年の駆け抜ける
森に入る途端に浴びし草いきれ
帽子脱ぎ汗を入れたるベンチかな
染め柄の様に散り敷く栗の花
万緑や森の息吹の満満と
涼しさを持ち帰りたき山里に
縁側の板の涼しく寝転べる
南北に風を通して夏座敷
郭公も聞いて藁屋に寛げる
ロッジ今閉ざされてをり大夏野
卓上の視線集めしさくらんぼ
到来の地震の地よりのさくらんぼ
舌先の痺れるほどの氷菓子
ホール出て炎暑の町の眩しかり
日盛りの干し物乾く早さかな

 

芸北の藁ぶきの家

藁ぶき屋根の夏座敷
三瓶

花火




広島


盆一切



終戦日


残暑

秋めく
いまだ杖離されず行く夏野かな
父母と見し昔を偲ぶ遠花火
花火果て空静けさを取り戻す
音聞いて出るは遅しと遠花火
地下道を上れば暑さ待ち受けし
見えていてまだまだ遠き残暑道
ちちははの位牌も清め盆用意
草の市小さく束ねし花売れて
明烏背山に鳴ける墓参
焼け焦げし玩具の記憶終戦日
空襲の話を孫に終戦日
雨来れば矛収めたる残暑かな
昨夜の雨秋めく朝を呼び寄せる
衿元にまず秋めきし風を知る

 

三瓶の夏野

囲まれてゆく夜の
家から写した花火











秋日和

浜田城址にて








人気なき闇を広げて虫すだく
虫の音に囲まれてゆく夜の散歩
虫の音に誘はれゆく夜のベンチ
夜更ければなほ生き生きと虫の声
波音の深まる浜の愁思かな
月に佇つ厨仕事を終へてより
月に佇ち月に従ふ影法師
十六夜の月より他に見るはなし
歓声の空へ抜け行く秋日和
曲輪跡今秋蝶の舞ふ広場
次々と声を継ぎて法師蝉
秋の灯の一つで足りし二人住み
落城の碑文に愁思いや増せり
波音の深まる浜の愁思かな
秋暑し脇見の出来ぬ杖の磴
薄紅葉なせる広場や曲輪跡


浜田城址

浜田城址大手門
大阪





雑詠




三瓶山




秋晴れや大阪城も低く見え
秋の日の落つるを追ふて帰り道
爽やかに旅の挨拶締めくくる
山越えの家路は遠し秋の暮
身に入むやまだ残しおく母の櫛
釜底に松茸飯の香の残る
夜寒さをかこちて稽古帰りかな
日当たれば山生き生きと柿の秋
佐比売湖のさざ波返す秋の風
佐比売野に夕暮れ迫る草紅葉
夜寒さの玻璃戸曇れる山の宿
山の幸とてむかご飯供さるる

 

三瓶温泉・さひめ野
津和野




浜田城山


県立大学
金城周辺




雑詠
空青く堀庭園の石蕗の花
再訪す津和野は石蕗の花盛り
南天のまだ彩付かぬ鴎外居
御手洗の水音微か薄紅葉
秋空へ絵柄を置きし梢かな
丘陵を占めしキャンパスもみづれる
小流れの聞こえし住まひ干大根
農小屋の軒下ぐるり懸け大根
青々と葉を揃へたる畑大根
障害の手をもて神楽太鼓打つ
石蕗の花残し植え込み刈られたる

 

津和野堀庭園

金城町にて
雑詠 震災の復興祈り年を守る
黙祷の多かりし年守りをり
去る年の早さ戸惑う師走かな
電飾の町を彩るクリスマス
木の葉散る次への命繋ぎつつ
残照をしばし捕らへて冬紅葉
年毎に簡素を旨と年用意
障害の夫看取る身の風邪に臥す
何もかも断り続け風邪に臥す
賀状出し安堵の旅に夫とあり
年用意気に掛かりつつまづは旅