リハビリ科へ転院

 リハビリ科のあるM医師会病院の医師は女医さんで、「3ヶ月で歩けるようにします」といともあっさりと言ってのけた。車椅子からベットへの移動も何人がかりの現在、本当なのだろうかと耳を疑う。同じ医者でも言うことがこんなにも違うものか。夢のような話だ。当面は内科で検査をし、5日後にリハビリ棟へと移った。

 病院まで車で1時間の道のりを年内は毎日通った。廊下も広く、新しい病院だ。スタッフもとても親切。驚いたのは廊下などで出会う職員一人一人がみな挨拶してくれることだ。紹介状がないと行けない病院だから、待合室も混み合っていない。総じて静かな印象である。良いリハビリが出来そうな予感がもうしていた。先の希望が見えてきて、もう涙はなかった。

   元朝の雪ついて夫見舞ひけり

   病室の夫と御慶を述べ合ひて

   夫見舞ふ一と日一と日や日脚伸ぶ

 個室に入っていた主人は話し相手もなく、言語の弁別障害で、聞き取りも難しくなっていたせいか、パソコンで日記を付けたいと言い出した。この大変な体験を忘れないようにしたいのだと言う。子どもや孫にも残しておきたい。字を書くことは漢字も忘れているから難しいが、パソコンなら変換キーで思い出せる。たとえ一本指でも打てる。リハビリの一環としても良いことと思い、病院側にお願いすると許可が出て、専用の机をあてがってくれ、コードを繋いでくれた。勿論インターネットは出来ない。片手だから始めはポツリポツリ、のろのろと、文章も誤字、当て字は茶飯事であった。「パパ、左手でも打ってみたら?」「左手は机の上に乗せると、だらんと下に落ちてしまうんだ。」「諦めないで時々でいいからやってみてね」と私。